日本で初めて鉄道が走ったのは、1872年9月12日(明治5年)のことです。
一方、世界に目を向けてみると、日本の鉄道開業より約50年前の1825年にさかのぼります。
産業革命に代表される蒸気機関車が誕生したわけでありますが、産業革命といえばもちろんイギリスでありまして、地球上で初めて鉄道が走ったのもイギリスでした。
最初のイギリスの鉄道距離は、ストックトン~ダーリントンと呼ばれる都市の区間で約44kmでした。
ちなみに蒸気機関車は、J・スティーブンソン製作の「ロコモーション号」という名前だそうです。
目次
世界の鉄道が走り始めた歴史
先ほどの説明であったように、日本は世界の鉄道に遅れること約50年あったわけでありますが、その差を見る見るうちに縮め、追いつき、ついには世界を追い越してしまうぐらいまで成長をすることが出来ました。
欧米の先進国から約50年遅れてスタートし、そして約50年かけて追いつき、今や新幹線に代表されるように世界へその技術を輸出するまでに成長し、まさしく世界のトップ集団の仲間入りするまでになっています。
現在に至るまでには、当時の技術者たちの並々ならぬ努力があったことだと思います。
鉄道に関わる全ての方々に対し、尊敬するとともに世界の鉄道の良いところを取り入れて日本式の鉄道を作り上げた私たち日本人を誇りに思います。
西欧諸国の鉄道の開業
イギリスの開業の5年後の1830年、アメリカのボルチモア~エリコッツミルズ間の21kmが開業します。
さらにその翌年には、フランスでサンテティエンヌ~リヨン間で鉄道が開業し、続いてドイツとベルギーが1835年、カナダが1836年、ロシアが1837年、オランダ、イタリア、チェコスロバキアが1839年と開業ラッシュが続いています。
ちなみにその頃の日本といえば、水野忠邦の天保の改革があった時期で、まだまだ時代に取り残されていたと思われ、1840年にアヘン戦争が中国で起こるなど、西欧諸国から植民地にされかねない非常に危険な時代であったと言えます。
日本での鉄道の歴史
日本では新橋~横浜間に東アジアで初めて鉄道が走りました。
ここですごいと思ったのは、明治5年だという点です。
というのも江戸時代が終わりを告げ、ちょんまげの人や侍がまだまだたくさんいそうな時代に、近代化が始まってたったの5年で鉄道が走ったという事実。
この開業当時の様子を描いた錦絵にも見物人として描かれている観客は、よくイメージする江戸の町人が描かれていて、日本人で洋装をしているのは政府関係の人と鉄道関係の人だけだったそうです。
江戸時代は馬車という乗り物も知られていなかった
江戸時代では馬車という乗り物もほとんど知られていなかったようです。
確かに時代劇では馬車なんてものを見たことがありませんし、日本での馬で想像するのは、いつも単騎で将軍様が乗っているイメージですかね、馬車なんて出てくるのは西欧の映画やドラマの時代物ぐらいですよね。
欧米諸国では、鉄道の前身として馬車鉄道が発達していまして、馬が車両を率いて鉄路を走っていたそうです。
そのときの馬車鉄道の鉄路の幅というのが引き継がれ、標準軌と呼ばれている線路の幅なんですが、1435mmとして現在に至っています。
なので、馬車が日本に登場するのは明治維新後でした。
鉄道開業の日に馬車が走った出来事
鉄道開業式の日、式典には明治天皇も出席されているのですが、皇居から新橋駅までをお召馬車で移動したそうです。
当時は馬車について詳しい人がいなかったため、御者という仕事に慣れている人もいませんでした。
そこで、馬の扱いが上手な男に訓練をして、なんとか無事に新橋までたどり着くことが出来たとの話があるそうです。
また、その時の御者の服装というのが、欧米での洋服だとパジャマだったというからほんとに馬車文化というのが無かったというのがよく分かるエピソードですね。
国産の蒸気機関車ができるまで
江戸時代は鎖国していたせいもあり、日本は西欧諸国と比べて格段に後れをとっていました。
下手をすれば日本も西欧諸国の植民地化になる可能性があったわけで、そうならずに済んだ先人たちの努力は、相当のものであったと感心します。
鉄道も50年もの遅れがあったわけですが、欧米の発達スピードよりもさらに倍くらいのスピードで発展をする必要がありました。
そこで西欧の真似をたくさんして、失敗もたくさんし、当時外国から雇い入れた技術者などにも多額のお金を支出してついに追いつくことができたこと。
明治の鉄道に関わった先人たちのエネルギーは、ほんとにすごいの一言です。
最初の国産蒸気機関車「860形」
最初の国産蒸気機関車「860形」が作られたのは、1893年(明治26年)です。
国産機の量産体制が整ったのは大正時代に入ってからで、1913年(大正2年)に貨物用の主力機「9600形」、1914年(大正3年)に旅客用主力機「8620形」がデビューし、日本全国を走り始めます。
ちなみに現在の東京駅の赤レンガ駅舎が出来たのが大正3年の12月。
この東京駅開業のとき、東京~横浜間で電車運転も始まっています。
そして1922年の鉄道開業50周年を記念して、旧暦での9月12日、現在での新暦で10月14日を「鉄道記念日」として制定しています。1994年から現在では「鉄道の日」と改称しています。
東海道新幹線の登場
東海道新幹線の登場は、1964年(昭和39年)の10月1日。
当時の日本は、東京オリンピック開業の9日前で、新橋での鉄道開業からだと92年が経過しており、鉄道開業100周年の8年前でした。
このころの鉄道は、自動車と飛行機の台頭で衰退していく業界だと思われていました。
そのためほとんどの鉄道は、大都市の通勤列車を除いて衰退していくと言われていました。
その中で、新幹線の登場はこの世界の思惑を打破し、数百キロの大都市をつないで高速で大量の人を運び、緻密なダイヤを組むことで自動車にも飛行機にも勝てる乗り物として存在するに至ります。
東京駅新幹線ホーム18,19番線ホームの南端には、新幹線の生みの親と言われる元国鉄総裁の十河信二さんの胸像が飾られています。時間があったらぜひ見てみてください。
2022年は鉄道開業から150周年
今や新幹線は世界に輸出するまでに成長しており、今後さらなる飛躍が期待されます。
2022年は、初めて日本に鉄道が走ってから150年目になります。
2022年はきっと催しものをするのでしょうかね。楽しみですね。
追いつけ追い越せから今度は、追われる立場となった今、日本国内だけではなく世界へ羽ばたいて活躍してもらい、日本の経済、そして技術をけん引してくれる鉄道として、ぜひ頑張ってもらいたいと思います。